PMの仕事は、決めることと切ること
PMの役割は説明が難しく、組織によって呼び方も範囲も違います。ただ、うまく回っているPMの共通点を集めると、意外に単純でした。決まらないものを決め、増えるものを切っている。この2つです。
いちばん多い遅れの原因は「決まらないこと」
プロジェクトが遅れる理由を並べると、技術的な困難より、判断待ちの時間のほうが長いことが珍しくありません。
材料がそろうのを待つ判断は、慎重に見えます。けれど決めないことも一つの決定で、しかも選び直せません。待っているあいだの時間は戻らないからです。
実用的なのは、材料ではなく期限で切ることです。「◯日までに、あるもので決める」。決めた理由を一行残しておけば、後から検証もできます。
足すのは誰でもできる。切れる人は少ない
要望は必ず増えます。関係者が多いほど増えます。そして、増えた分は期限か品質のどちらかを削ります。
ここで効くのは、「入れないもの」を明文化して共有することです。書いてあると、後から戻しにくくなります。口頭で「今回はやめましょう」と言っただけでは、2週間後には復活しています。
切ったものの置き場を作っておくと、さらに通りやすくなります。「今回入れないが、次に検討する」という枠があるだけで、切ることが拒否ではなくなります。
正しい案が通らない理由
内容が正しいのに通らない、という経験は多くのPMがしています。原因は、たいてい内容ではありません。
相手が何を守りたいかを押さえていないことが原因です。予算、評価、面子、既存の仕事。守りたいものが脅かされると、人は内容を検討する前に反対します。
説得の前に、相手が守りたいものを1つ書き出す。それを壊さない形に案を調整する。この一手間で、通る確率がまったく変わります。
起きなかった事故は、数えられない
リスクを先に見つけて手を打つ人は、目立ちません。事故が起きないので、成果が「起きなかったこと」の形をしているからです。
そして評価には乗りません。これは仕組みの限界であって、本人の努力不足ではない。防いだ問題を記録に残すことでしか、この成果は見えるようになりません。
一方で、この型の弱点もはっきりしています。慎重さが決断の遅れに変わることです。リスクを挙げたら、必ず「それでも進める条件」まで書く。止める人から進める人に変わります。
8つの型と、噛み合う相手
| 型 | 強み | 隣に置きたい型 |
|---|---|---|
| 段取り型 | 逆算と遅れの早期発見 | 調整型 |
| 調整型 | 立場の違う相手との合意 | 切る型 |
| 決断型 | 停滞を破る速さ | チームを見る型 |
| リスク番型 | 事故を起こさない | 決断型 |
| チームを見る型 | 詰まりへの早い気づき | 切る型 |
| 切る型 | 増える要望を止める | 段取り型 |
| 動いて解決する型 | 起きたあとの速さ | リスク番型 |
| 何を作るかを決める型 | 方向と範囲の決定 | 段取り型 |
PMは一人で全部を満たす仕事ではありません。弱い軸が見つかったら、そこを鍛えるより、できる人を隣に置くほうが早く着きます。
肩書きがなくてもできること
PMという肩書きがなくても、この6つの力は使えます。むしろ、肩書きのない状態で発揮できた人が、後からPMになることが多い。
- 会議のあと、決まったことと担当を書いて送る。これだけで、実行率が変わります。
- 着手前に「うまくいかないとしたら、どこか」を3つ書く。先読みの練習になります。
- 「これは誰が決めますか」と聞く。決まらない案件の多くは、決める人が不明です。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文や、特定の資格体系からの引用は含みません。この診断は採用・昇進・配置の判断に用いることを想定していません。