ルールを破る前に確認する3つのこと。踏み越えていい線と、絶対に越えない線
決まりのほうが間違っている場面はあります。ただし踏み越えるかどうかを気分で決めると、いつか高い代償を払います。得をするのは誰か、元に戻せるか、説明を残せるか。この3つで判断するための整理です。
- こんな人に
- 決まりがおかしいと感じている人
- 結論
- 気分で決めない。踏み越えていい線と、絶対に越えない線を先に持つ
- 読む時間
- 約3分
決まりのほうが古い、という場面はあります。前例がないというだけで止まる会議、目的を失ったまま残っている手順、誰も読んでいない規程。
そういうときに踏み越える力は、必要な力です。ただし踏み越えるかどうかを、そのときの気分と勢いで決めていると、いつか高い代償を払います。うまくいった記憶だけが残り、判断が甘くなっていくからです。
ここでは、行動の前に確認する3つの質問を置いておきます。所要時間は1分もかかりません。
① 得をするのは、誰か
最初の質問です。この逸脱で得をするのは、自分だけか、それとも自分以外の誰かか。
自分だけなら、それは交渉でやるべきことで、逸脱でやることではありません。取り分がほしいなら、正面から求めたほうが結果的に多く取れます。裏から取ったものは、次の交渉の条件を悪くするからです。
注意したいのは、自分の得を「全体のため」と言い換えてしまう瞬間です。見分け方は簡単で、その理屈を、得をしない立場の人の前で言えるかどうか。言えないなら、動機は自分に向いています。
② 元に戻せるか
2つ目は、失敗したときに戻せるかどうかです。ここが判断のいちばん太い線になります。
- 戻せること。手順の順番を入れ替える、承認より先に着手する、様式を変える、前例のない相手に声をかける。失敗しても、謝って直せます。試してよい領域です。
- 戻せないこと。法令、安全、人の権利、お金、そして信用。ここは、どんなに正しい理由があっても越えません。動機の正しさは、結果の取り返しのつかなさを埋め合わせません。
この線引きが効くのは、判断が速くなるからです。「戻せるか」の一言で、大半の迷いは片づきます。迷い続けるのは、たいてい戻せない側だと薄々分かっているときです。
③ 説明を、残せるか
3つ目。やったことを、あとで説明できる形にできるか。
難しく考える必要はありません。理由・関係者・結果の3行で足ります。「この手順を飛ばした。誰と誰が知っている。こうなった」。これだけで、あとから振り返れます。
そして、この質問がいちばん効きます。書こうとした瞬間に、書けないものが分かるからです。書けないなら、それはまだやるべきではない。それだけの話です。
逆に、書けたものは強い。問題が起きたときに守ってくれますし、うまくいったときには前例として使えます。記録のない突破は、成功しても一度きりで終わります。
「破る」の前に、2つの手がある
ここまで読んで気づいた人もいると思いますが、そもそも踏み越える前に、試していない手が残っていることが多いのです。
- 例外として申請する。多くの規則には例外の入口があります。使われていないだけです。通れば、記録に残る形で同じ結果が得られます。
- ルールそのものを変える。時間はかかりますが、次から全員が使えるようになります。1回目は例外申請、2回目は改定提案。この順番が、いちばん摩擦が少ない。
同じ突破を2回やったら、3回目は破るのをやめて提案に切り替える。これができる人が、現場から制度側に移っていきます。
破らなかったことも、記録に残す
もうひとつ。おかしいと思ったけれど踏み越えなかった場面も、書き残しておく価値があります。
そのときに「この手順のここで止まった」と残しておけば、あとで改定を提案するときの材料になります。不便の記録は、制度を変えるときのいちばん強い証拠です。
何も言わずに我慢すると、その不便は存在しなかったことになります。黙っていることは、賛成として記録されるからです。
まとめ
- 得をするのは誰か。自分だけなら、逸脱ではなく交渉で。
- 元に戻せるか。戻せることは試してよい。法令・安全・権利・お金・信用は越えない。
- 説明を残せるか。3行で書けないなら、まだやらない。
この3つを通ったものだけが、あとから前例になります。自分がふだんどのくらい踏み越える側にいるのかは、アウトロー診断で確認できます。