自責と他責は、対義語ではない
「他責にするな、自責で考えろ」という言い方をよく聞きます。半分は正しいのですが、 この言い方には落とし穴があります。自責を強めても、他責が減るとは限らないからです。 実際には、自分も相手も責め続けて消耗している人が、いちばん多い。
1本の軸で考えると、取りこぼす
自責と他責を、シーソーの両端のように考えると分かりやすい気がします。片方が上がれば、片方が下がる。 けれど実際に人の話を聞いていると、そうなっていません。
- 自分も相手も責める人。会議のあと、相手のやり方に苛立ちながら、家に帰ってから自分の発言を後悔する。両方とも高い状態です。
- どちらも責めない人。誰が悪いわけでもない、どうにもならない、と感じている。両方とも低い状態です。
- 場面で入れ替わる人。職場では自責、家庭では他責。相手との力関係で置き場所が変わります。
だからこの診断では、自責と他責を別々の軸として測っています。どちらが強いかではなく、 どういう組み合わせになっているかを見るためです。
本当に効いているのは、第三の要素
自責が強い人と他責が強い人を見比べると、意外なことに困り方が似ています。 どちらも、同じ問題が繰り返し起きる。どちらも、疲れている。
共通しているのは、原因を置いたところで止まっていることです。自分に置いても、外に置いても、 そこから対策に移らなければ、次も同じ場面が来ます。 結果を分けているのは、自責か他責かではなく、そのあと手を打ったかどうかでした。
「事実」と「人格」を分ける
この診断でいちばん重要な軸は、切り分けです。ここが低いと、自責も他責も破壊的な形になります。
ミスをしたとき、「対応が漏れた」で止まれば改善の話になります。 「自分はダメな人間だ」まで行くと、改善ではなく自己否定になります。 他人に対しても同じで、「確認が抜けていた」と「あの人はいい加減だ」はまったく別の発言です。
切り分けができていれば、自責は改善に変わり、他責は交渉に変わります。 できていなければ、自責は自己否定に、他責は人格攻撃に変わる。同じ材料から、違うものが出てきます。
環境のせいだ、はたいてい正しい
他責が悪者にされがちですが、実際には環境が原因のことは山ほどあります。 人手が足りない、期限が無茶、情報が渡っていない、決める人がいない。これらは事実です。
問題は、正しいかどうかではありません。外にしか原因を置かないと、打てる手が自分の外にしか残らないことです。 そして、自分の外にある手は、たいてい自分では動かせません。
だから実用的なのは、外の要因を全部書き出したうえで、 そのうち交渉できるものに印をつける作業です。「文句を言うな」ではなく「交渉先を特定する」。 これなら、認識を曲げずに手を増やせます。
背負いすぎている人へ
逆に、なんでも自分のせいだと感じてしまう人もいます。この状態は、周囲からは「責任感が強い」と見えるので、 問題として扱われないまま進みます。
ここで起きているのは、責任の範囲が自分の外まで伸びていることです。他人の判断、上の方針、市場の変化。 本来は自分の領分でないものまで、自分の失敗として記録されていきます。
効くのは、反省を増やすことではありません。仕分けです。 起きたことを「自分の領分/相手の領分/誰の領分でもない」の3つに分けて書く。 それだけで、抱えている量がかなり減ります。
なお、自分を責める気持ちが強く、気分の落ち込みや不眠が続いている場合は、 考え方の工夫で解決しようとせず、産業医・かかりつけ医などの専門家にご相談ください。
言えないと、自責として積み上がる
見落とされやすいのが、申し立ての軸です。理不尽な依頼を断れないまま引き受けると、 うまくいかなかったときの責任は自分に来ます。
このとき本人は「自分の力不足だった」と記録しますが、実際には条件のほうが無理だった、ということが起きています。 言えないことが、他責を自責に変換しているわけです。
使いやすい言い方は、断る形ではなく条件を出す形です。「できません」ではなく「この条件なら できます」。 相手も判断しやすくなるので、通る確率が上がります。
7つの型と、次にやること
| 型 | 起きやすいこと | まずやること |
|---|---|---|
| 是々非々で置ける | 周りに同じ精度を求めてしまう | 相手が身構えていないか先に見る |
| 背負いすぎている | 他人の領分まで自責になる | 3つに仕分けて線を引き直す |
| 外に向きやすい | 打てる手が自分の外にしか残らない | 交渉できるものに印をつける |
| 引き受けて動く | 条件の問題を努力で解こうとする | 努力か条件かを1行で判定する |
| 言えないまま抱える | 納得しない責任が積み上がる | 「この条件なら」の形を用意する |
| 原因分析で止まる | 同じ分析を毎回やり直す | 原因1行・次にやること1行で終える |
| 手綱を手放している | 意欲を出そうとしても戻らない | 今週やることを1つだけ決める |
他人の型を、当てはめない
最後に、この診断の使い方について一つ。結果を他人に貼るのは、本来の用途から外れます。
「あの人は他責型だから」と言い始めた時点で、それは人格の話になっています。 切り分けの軸が下がった状態そのものです。この診断は、他人を分類するためではなく、 自分の置き場所を点検するためのものだと考えてください。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。 「原因をどこに置くか」という見方は、心理学の分野で広く共有されている一般的な概念として用いています。 気分の落ち込みや不眠が続く場合は、産業医・かかりつけ医などの専門家にご相談ください。