光と闇を分けているのは、度胸ではなく「説明できるか」
同じようにルールを踏み越えても、あとで英雄と呼ばれる人と、処分される人がいます。違いは能力でも運でもありません。誰のためにやったかと、見える場所でやったか。この2つだけです。
アウトローとは、悪人のことではない
アウトロー(outlaw)はもともと「法の保護の外に置かれた者」を指す言葉です。悪人という意味ではなく、その集団の決まりごとの外側にいるという位置の話でした。
だから、決まりを踏み越える力そのものには色がついていません。色をつけるのは、次の2つです。
- 動機の向き。踏み越えた結果、得をするのが自分だけか、それとも自分以外の誰かか。
- 説明の有無。やったことを記録に残し、あとで誰に聞かれても説明できるか。
この2つがそろっているとき、逸脱は「先に動いた人」になります。どちらかが欠けたとき、同じ行動が「勝手にやった人」になります。
3つの立ち位置と、そのメリット・デメリット
この診断では、ルールとの距離のとり方を大きく3つに分けています。光のアウトロー、闇のアウトロー、そして秩序の設計者です。
| 立ち位置 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 光のアウトロー | 手続きが追いつかない場面で、最初に動ける。信頼と人望が集まりやすい | 再現性がない。本人が抜けると元に戻り、後の人は同じことを許されない |
| 闇のアウトロー | 機会を取り逃がさない。他人が遠慮している場所に、先に手が届く | 信用が積み上がらない。短期の勝ちが、次の取引の条件を悪くする |
| 秩序の設計者 | 影響が長く残る。一度書いた手順は、本人がいなくても人を動かし続ける | 遅い。目の前の一件には間に合わないことがある |
チャンスとリスク、そして社会に及ぼすもの
立ち位置が変われば、伸びる場所も、壊れ方も変わります。まわりへの影響まで含めて並べると、次のようになります。
| 立ち位置 | チャンス | リスク | 社会的な影響 |
|---|---|---|---|
| 光のアウトロー | 突破が前例になり、ルールを書き換える側に呼ばれる | 動機が正しくても、手続き違反の責任は残る。消耗して離脱しやすい | 制度の穴を先に見つける。同時に「あの人だから許された」という不公平の火種にもなる |
| 闇のアウトロー | その嗅覚を、交渉・調達・危機対応など正面から利益を取る仕事に置ける | 説明できない判断が積もり、いつか一度で全部を失う | 抜け道の存在を可視化する。まわりが真似を始めると、その場のルールが一気に緩む |
| 秩序の設計者 | 制度・基準・仕組みを任される役割。ここでは代えがきかない | 整えることが目的化し、現場を縛る側に回る | 公平さを作る。突破した個人ではなく、次に来る全員が同じ条件で動けるようになる |
並べて分かるのは、どれかが正しいわけではないということです。光のアウトローだけの組織は、その人が辞めた日に止まります。設計者だけの組織は、決まりの外で起きた出来事に対応できません。
「秩序を守る人」という言い方を、少し変えたい
アウトローの反対側にいる人を、私たちはよく「秩序を守る人」と呼びます。ただ、この言い方には損があります。守るという言葉は、現状維持と結びつきやすいからです。番人、ブレーキ役、できない理由を言う人。そんな像がついてまわります。
実際に効いているのは、そこではありません。この側の人がいちばん力を出すのは、ルールを書き直し、仕組みで人を動かすときです。だからこの診断では、秩序の設計者と呼んでいます。
そのうえで、ルールを正確に運用する役割も欠かせないので、こちらは秩序の守り手として別に置きました。設計する人と、運用する人。同じ「秩序の側」でも、必要な力がまったく違います。
- 秩序の設計者。ルールを作り替える。半年後の景色を変える人。
- 秩序の守り手。ルールを守り、守らせる。今日の事故を防ぐ人。
防いだ事故は数えられないので、守り手はいちばん感謝されにくい役割です。それでも、この人がいない組織は、いつか必ず一度で大きく損をします。
踏み越える前に、3つだけ確認する
逸脱そのものは道具です。使う前に、これだけ確認してください。
- ① 得をするのは誰か。自分だけなら、それは交渉でやるべきことで、逸脱でやることではありません。
- ② 元に戻せるか。戻せることは試してよい。戻せないこと——安全、法令、人の権利、信用——は、どんな理由でも越えない。
- ③ 説明を残せるか。理由・関係者・結果の3行でかまいません。書けないなら、それはまだやるべきではない、というだけの話です。
この3つを通ったものだけが、あとから前例になります。通らなかったものは、うまくいっても、あなたの評判を少しずつ削っていきます。
7つの型と、次にやること
| 型 | 強みが出る場所 | 次にやること |
|---|---|---|
| 光のアウトロー | 立ち上げ・現場の緊急対応 | 2回目の突破は、ルール改定として出す |
| 闇のアウトロー | 交渉・調達・立て直し | 取り分は堂々と、手段は見える場所で |
| 越境者 | 新規事業・前例のない案件 | 判断の基準を1文で書いてから動く |
| 内側の反逆者 | 制度改革・現場の代弁 | 反対の前に代案を1つ、味方を2人 |
| 秩序の設計者 | 制度設計・基準づくり | 作る規則に、例外の申請口をつける |
| 秩序の守り手 | 検査・監査・安全・運用 | 断るときは、通る道をひとつ添える |
| アウトサイダー | 専門職・独立・小さなチーム | 年に数回だけ、決定の場に出る |
立ち位置は、変えられる
この結果は性格の判定ではありません。いまの役割と、いまの環境で出ている形です。現場にいるあいだは踏み越える側だった人が、決める側に回った途端に設計者になる。これはよくある移り方です。
変えたいときに動かせるのは、たいてい2つだけです。動機の向きと、説明の残し方。度胸を増やす必要も、性格を直す必要もありません。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。また、法令違反や、安全・人の権利を損なう行為を勧めるものではありません。