「秩序を守る人」という言い方をやめる。ルールの側に立つ人の、本当の強み
守るという言葉は、現状維持と結びつきます。番人、ブレーキ役、できない理由を言う人。けれどこの側の人がいちばん力を出すのは、ルールを書き直して仕組みで人を動かすときです。設計者と守り手、2つの役割の違いを整理しました。
- こんな人に
- ルールや制度を守る側にいる人
- 結論
- 守る人は現状維持ではない。線を引き直せるのは、この側の人だけ
- 読む時間
- 約3分
アウトローの反対側にいる人を、私たちはよく「秩序を守る人」と呼びます。
この言い方には、損があります。守るという言葉が、現状維持と結びついてしまうからです。番人、ブレーキ役、できない理由を先に言う人。そんな像がついてまわり、本人まで「自分は止める側だ」と思い込んでいきます。
けれど実際には、この側の人がいちばん力を出すのは、止めているときではありません。ルールを書き直し、仕組みで人を動かしているときです。
同じ「秩序の側」に、まったく違う2つの役割がある
整理すると、ここには性質の異なる役割が2つ入っています。混ざったまま一語で呼ぶから、話がややこしくなります。
- 秩序の設計者。ルールを作り替える人。半年後の景色を変えます。必要なのは、目的から考える力と、合意を取る力。
- 秩序の守り手。ルールを守り、守らせる人。今日の事故を防ぎます。必要なのは、正確さと、例外に流されない胆力。
どちらも欠かせませんが、求められる力が違います。設計者に正確さだけを求めると制度が古びますし、守り手に柔軟さばかり求めると、守るべき線まで曲がります。
設計者の強み——影響が、いちばん長く残る
一度書かれた手順は、書いた人がいなくなっても人を動かし続けます。個人の頑張りに依存しないので、成果が減りません。
もうひとつ、見落とされがちな効き目があります。逸脱を、人格の問題として処理しなくて済むようになることです。
設計の視点がない組織では、誰かが手順を飛ばすと「あの人が悪い」で終わります。設計者がいる組織では「この手順が古い」と言えます。後者だけが、同じ失敗を繰り返さなくなります。
設計者が気をつけること
- 例外の申請口を必ずつける。逃げ道のない規則は、守られるのではなく、黙って迂回されます。迂回は記録に残らないので、いちばん手に負えません。
- 半年に一度、使われていない手順を捨てる。足すより捨てるほうが難しく、効果は大きい。
- 踏み越えた人を罰する前に、理由を聞く。そこに、次の改定のヒントがあります。
守り手の強み——防いだ事故は、数えられない
この役割は、いちばん感謝されにくい仕事です。理由ははっきりしていて、防いだ事故は数えられないからです。起きなかったことは、成果として見えません。
それでも、この人がいない組織は、いつか一度で大きく損をします。検査、監査、安全、経理、運用。品質や安全が「約束」として成立しているのは、ここに人がいるからです。
守り手が損をしないために
- 断るときは、通る道をひとつ添える。「できません」だけだと壁になりますが、「この形なら通ります」と言えると相談される側になります。情報が集まるので、判断もしやすくなります。
- 守っている規則の目的を、年に一度確認する。目的が消えた規則を守り続けると、まわりの信頼まで一緒に失います。
- 言いにくいことは、記録に残る形で出す。この役割の人は摩擦が苦手なことが多いので、口頭より文書のほうが強く出られます。
なぜ「守る」だけでは足りないのか
守るという言葉には、前提があります。いまのルールが正しいという前提です。
ところが実際には、ルールは古びます。作られたときの事情が消え、条文だけが残る。そのとき「守る」しかできない人は、間違ったものを正確に守り続けることになります。
だから、秩序の側に立つなら、守ると同時に書き直せることが要ります。この診断で「秩序の設計者」という呼び方を選んだのは、そのためです。守り手が下だという意味ではありません。守るだけでは、守りきれないという意味です。
アウトローと設計者は、対立しない
最後にひとつ。この2つは敵同士ではありません。むしろ、いちばん噛み合う組み合わせです。
アウトローは、制度の穴を先に見つけます。設計者は、それを次に来る全員が使える形に変えます。片方だけでは、穴は塞がらないか、そもそも見つかりません。
そして実際、いい設計者の多くは、かつて現場で踏み越えた経験を持っています。外に出たことがある人ほど、現実的な規則を書けるからです。
自分がいまどちら側に立っているかは、アウトロー診断で言葉にできます。設計者と守り手は別の型として分けてあります。