老後の備えは、お金だけの話ではない
老後というと、まず資金の話になります。もちろん大事なのですが、退職後に実際に効いてくるのは別のものでもあります。予定がなくなること、役割がなくなること、そして人に会わなくなることです。
お金の不安は、分からなさから来る
まずお金の話から。ここでいちばん多いのは、金額が足りないことより、把握していないことによる不安です。
年金の見込み額は、通知や公的なサービスで確認できます。いまの生活費も、数か月分の記録があれば分かります。この2つを並べて書くだけで、1時間で終わります。
足りないと分かっても、時間があるうちに分かるほうがいい。働く期間を延ばす、支出を見直す、住まいを変える。選べる手段は、早いほど多くなります。
いちばん費用に効くのは、健康
意外と語られませんが、老後の生活費を大きく動かすのは健康です。医療費と介護費は、ここで変わります。
そして、いくら計算が正確でも、健康を崩すと前提から変わります。働けるかどうか、住み続けられるかどうか、すべてに影響します。
強度は要りません。10年続く軽い習慣と、定期的な健診。この2つで、見通しの確かさが上がります。
住み替えは、体力があるうちにしかできない
住まいの計画は、後回しにされがちです。いま困っていないからです。
ただ、住み替えは、体力と判断力があるうちにしかできません。段差、階段、買い物と通院の距離。条件は10年で変わります。
決めるのはまだ先で構いません。「10年後、この家で困ること」を3つ書き出しておく。それだけで、動くべき時期が見えてきます。手すりや段差の解消は、住み替えより費用が小さいので、先に検討する価値があります。
退職で失われるのは、収入より先に人間関係
ここがこの診断でいちばん伝えたい部分です。
人間関係が職場に集中していると、辞めた日から会う人がいなくなります。しかも、職場の外の関係は在職中にしか作りにくい。時間はあっても、きっかけがなくなるからです。
そして、これは書類のようには準備できません。時間がかかります。いまのうちに、仕事と関係のない場所を1つ作る。地域、趣味、学び直し、ボランティア。何でも構いません。
選ぶときのコツがひとつ。肩書きのない場所を選ぶことです。そこでの関係が、あとで効きます。
時間が余ることは、思っているほど楽ではない
役割も同じです。退職後にいちばん堪えるのは、予定がないことだと言われます。
毎日の予定がなくなると、生活のリズムから崩れ、体調にも影響します。趣味があっても、ひとりで完結するものだけだと続きにくい。
効くのは、誰かと約束のある予定です。週に1つでいい。役割は、そこから自然に生まれます。
7つの型と、最初の一歩
| 型 | 薄いところ | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| 数字と書類が固まっている | つながりと役割 | 職場の外の場所を1つ作る |
| お金の見通しがない | 把握 | 年金見込み額と生活費を並べる |
| 健康の備えが薄い | 体 | 健診の予約を1件入れる |
| 住まいの計画がない | 住まい | 10年後に困ることを3つ書く |
| つながりが職場に偏る | 関係 | 仕事と無関係の場所を1つ作る |
| 予定と役割が足りない | 役割 | 約束のある予定を週1つ作る |
| 手続きが手つかず | 書類 | 書類の場所を1枚の紙に書く |
書類は、残された人のために
最後に、いちばん気が進まない話を。
相続や遺言まで一度に考えなくて構いません。まずは1枚の紙に、保険・年金・口座の書類がどこにあるかを書く。それだけで、残された人の負担がかなり減ります。
中身を書く必要はありません。場所だけで足ります。そして、その紙の置き場所を家族に伝えておく。10分で終わる作業で、いちばん感謝される備えです。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。金融助言でも医学的助言でもありません。年金額や制度は個別に異なるため、実際の数字は公的機関の通知や窓口でご確認ください。