知らないことは、知らないので見えない
自分の実力を正しく評価するのは、思っているより難しい。知らないことは、知らないので見えないからです。これは能力ではなく構造の問題で、誰にでも起きます。だから、外から確かめるしかありません。
まず、有名な話の限界から
ダニング=クルーガー効果は、「能力の低い人ほど自分を高く評価する」という形で紹介されます。
ただ、測定方法や解釈については議論があります。統計的な性質によって、実際より強い効果に見えている可能性が指摘されています。
それでも、実務的に使える部分はあります。知らないことは、知らないので見えない。この構造自体は、経験として多くの人に思い当たるはずです。
いちばん効くのは、知らないことの把握
6つの条件のうち、実際にずれを小さくしているのがこれです。
「その分野で、まだ分かっていないこと」を3つ書き出せるか。書けるなら、地図の輪郭が見えています。書けないなら、地図そのものを持っていない可能性があります。
これは能力の話ではありません。単に、まだその分野の広さを見ていないというだけです。
学ぶほど、自信が下がる時期がある
この経験の有無が、大きな分かれ目になります。
本を数冊読んだ段階が、いちばん自信が出ます。全体が見えた気になるからです。そこから先に進むと、分からないことが増えて、自信が下がる。
この経験が1つでもあると、次の分野でも慎重になります。転用されるからです。逆に、この経験がないと、毎回同じところでずれます。
過小評価も、同じくらいのずれ
過大評価ばかりが問題にされますが、逆側も同じです。
できることを、できないと思っている。害がないように見えますが、任される機会を失い、伸びる場面を逃します。そして、謙遜が続くと周りも本気にしなくなる。
効くのは、外の評価を確かめることです。人から褒められたことを3つ書き出す。自分では気づいていない強みが、たいてい出てきます。
7つの型と、次の一歩
| 型 | いまの状態 | 次の一歩 |
|---|---|---|
| ずれが小さい | 校正できている | 新しい分野では、ずれる前提で |
| 高く見積もっている | 知らないことが見えない | 1人に改善点を聞く |
| 低く見積もっている | 機会を逃している | 褒められたことを3つ書く |
| 照合していない | 自分の中だけで完結 | 自分と周りの評価を並べる |
| 難しさが見えている | 正しく進んでいる | できたことを書き出す |
| 慣れて止まっている | 更新していない | 年1回、改善点を聞く |
| 確かめにいく | 修正が早い | 集めた意見を3つに分ける |
立場が上がるほど、悪い情報は届かない
最後に、経験のある人ほど注意したい点を。
実績があり、根拠も説明できる。それでも、フィードバックを取りにいかなくなると、根拠が過去のものになります。
そして、立場が上がるほど、人は言わなくなります。待っていても届きません。年に一度でいいので、「改善するとしたらどこか」を自分から聞く。それだけで、校正が保てます。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。ダニング=クルーガー効果については、測定方法や解釈に議論があります。この診断は能力を判定するものではありません。