水と食料の前に、まだやることがある
防災というと、まず水と食料の話になります。ただ、実際に困るのはもう少し手前です。家具が倒れて動けない、連絡が取れない、トイレが使えない。備蓄があっても、そこに手が届かなければ意味がありません。
順番① 住まいの安全
いちばん費用対効果が高いのがここです。地震の被害の多くは、家の中で起きます。倒れた家具、割れたガラス、ふさがれた出口。
全部をやる必要はありません。寝室と、出口までの通路。この2か所だけでも先に手を打ってください。寝ているあいだに倒れてくるものが、いちばん危ない。
あわせて、ハザードマップの確認は無料です。自宅と職場の危険を、一度だけ見ておく。それだけで、判断の材料が大きく増えます。
順番② 連絡と避難の決め事
次に効くのが、決め事です。こちらも費用はかかりません。
災害時にいちばん困るのは、家族と連絡が取れないこと。電話はつながらない前提で考えてください。そして、電源が切れると、地図も連絡も情報も同時に止まります。
- 連絡がつかないときの集合場所を、1つ決める。これだけで状況が変わります。
- 避難先を、災害の種類ごとに確認する。地震で安全な場所が、水害では危険なこともあります。
- 避難先までの道を、一度歩く。知っていることと、歩いたことは違います。
順番③ 備蓄と、生活の継続
ここでようやく物の話になります。ただ、水と食料だけでは足りません。
いちばん見落とされるのがトイレです。断水すると、水や食料より先に困ります。簡易トイレを、家族の人数×数日分。これは優先度が高い。
あわせて、停電時に使えるのは現金だけです。カードも電子決済も止まります。小額紙幣で手元に置いておく。常備薬の予備も同じです。
備蓄は、特別なものを買う必要はありません。ふだん食べているものを、少し多めに置く。使いながら買い足す形にすると、期限切れを防げます。
順番④ 持ち出しの準備
そのときに集めるのは、まず無理です。暗い中で、慌てながら探すことになります。
完璧な袋を作る必要はありません。代えがきかないものだけを1袋に。常備薬、充電器、現金、保険証の写し、眼鏡。あとは、あとから買えます。
置き場所は、玄関の近く。奥にしまうと、持ち出せません。
7つの型と、最初の一歩
| 型 | 薄いところ | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| ひととおり備えている | 更新 | 年1回の点検日を決める |
| 備蓄だけ | 住まいの安全 | 寝室の家具を固定する |
| 住まいの安全が手つかず | 家の中 | ハザードマップを見る |
| 持ち出しの準備がない | 持ち出し | 代えがきかないものを1袋に |
| 連絡と情報が弱い | 連絡 | 集合場所を1つ決める |
| 避難の計画がない | 避難 | 避難先まで一度歩く |
| 在宅の備えが薄い | 生活の継続 | 簡易トイレを用意する |
在宅でしのぐ、という選択肢
避難所に行くことだけが備えではありません。自宅が無事なら、そこにとどまるほうが安全なことが多い。
そのために要るのが、トイレ、水、現金、薬、明かり。この5つがあると、選択肢を持てます。避難所が満員だったとき、あるいは家族に配慮が必要なとき、この選択肢の有無は大きい。
備えは、更新しないと古くなる
最後に。一度作って終わり、にはできません。
食料の期限、電池の劣化、家族構成の変化、常備薬の変更、子どもの成長。年に1回、点検の日を決めておく。防災の日など、覚えやすい日に紐づけると続きます。
そしてもうひとつ。近所の人と、声をかけ合える関係。これは備蓄では代えられません。実際の災害で助けになるのは、たいてい近くにいる人です。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。必要な備えは地域と住まいで異なります。実際の備えと避難先は、お住まいの自治体の情報でご確認ください。