預金を失う経路は、4つしかない
資産運用の話はよく目にしますが、預金そのものを守る話はあまり出てきません。実際に預金を失うのは、運用の失敗ではありません。不正利用、詐欺、把握漏れ、そして必要なときに引き出せないこと。この4つです。
経路① 不正利用
いちばん改善が速い場所です。そして、被害の多くは設定で防げる範囲で起きています。
やることは3つだけ。
- 入出金の通知をオンにする。異変に早く気づけます。今日できます。
- 二段階認証を設定する。金融機関の案内に手順があります。
- パスワードの使い回しをやめる。金融関係だけでも先に変える。
費用も知識もほとんど要りません。この3つで、防げるものがかなり変わります。
経路② 詐欺
これは知識では防げません。疲れているとき、焦っているときは誰でも引っかかります。手口は、そこを狙って作られているからです。
だから、判断ではなくルールにしておきます。「お金の話は、その場で決めない」。この一文を、家の決まりにしてください。例外を作らないのが要点です。
あわせて、連絡先は必ず自分で調べ直してかけ直す。届いたメールや電話の番号は使わない。この2つで、多くの手口が空振りします。
相談できる相手を1人決めておくのも効きます。ひとりで判断する状況を減らすだけで、確率が下がります。
経路③ 把握漏れ
何年も見ていない口座がある。これは思っているより危ない。
把握していない口座は、不正に気づけない口座です。手数料が引かれ続けていることもありますし、長く動きがないと手続きが面倒になります。
やることは1つ、1枚の紙に書き出すことです。金融機関名と用途だけで足ります。全部の残高を調べる必要はありません。書き出したうえで、使っていないものは閉じる候補にしてください。
経路④ 引き出せないこと
見落とされやすいのがこれです。
いくら資産があっても、その日に使えなければ助けになりません。急な入院、災害、修理。必要になる場面は、たいてい予定されていません。定期や運用に寄りすぎていると、動かせない時間が生まれます。
目安として、生活費の3〜6か月分を、すぐ動かせる形で持っておく。あわせて、停電時に備えて少額の現金も手元にあると安心です。
分散は、上限額と障害の両方に効く
1つの金融機関にまとめておくのは、管理は楽ですが2つのリスクがあります。
- 保護の上限。預金保険には上限があります。金額が大きいなら、自分の残高と比べておく。
- システム障害。その日に引き出せない、ということが実際に起きています。
対策は簡単で、別系統の金融機関に1口座作り、生活費の1か月分を置いておくだけ。それで両方に備えられます。
7つの型と、最初の一歩
| 型 | 弱点 | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| 守りが固い | 更新 | 年1回の点検日を決める |
| 1行に集中 | 分散 | 保護の上限額と残高を比べる |
| 設定が手つかず | 不正利用 | 今日、入出金の通知をオンに |
| 急かされると動く | 詐欺 | 「その場で決めない」を家の決まりに |
| すぐ使えるお金が薄い | 流動性 | 3〜6か月分を動かせる形にする |
| 把握できていない | 口座管理 | 口座を1枚の紙に書き出す |
| 自分しか知らない | 共有 | 金融機関名の一覧を家族に伝える |
伝わらない資産は、ないのと同じ
最後に、いちばん後回しにされる話を。
本人しか知らない資産は、いざというとき存在しないのと同じになります。入院や事故は、準備の有無に関係なく起こります。
誤解されがちですが、暗証番号を教える必要はありません。「どこにあるか」だけ分かれば、あとは手続きで進みます。金融機関名の一覧を1枚作り、保管場所を伝えておく。それで足ります。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。金融助言ではありません。制度や保護額は変わりうるため、実際の判断は金融機関や公的機関の情報でご確認ください。