ダークパターンは、悪意ではなく積み重ねで生まれる
解約導線を1つ深くする。料金の表示を最後に回す。同意のチェックを最初から入れておく。ひとつずつは小さな判断で、それぞれ数字は改善します。合計したときに何が起きているかは、誰も見ていません。
なぜ、気づかないうちに増えるのか
ダークパターンが入り込む経路は、だいたい決まっています。
- 短期の指標だけで判断している。離脱率、CVR。改善して見えるので、通ります。
- 個別の施策として見ている。ひとつずつは小さいので、誰も止めません。
- コストが遅れて来る。返金、問い合わせ、悪評、解約。数か月あとに、別の指標として現れます。
つまり、設計者の倫理観の問題ではなく、評価の仕組みの問題であることが多い。だから、チェックの手順を入れるのがいちばん効きます。
解約のしやすさは、獲得の武器になる
ウェブで申し込めるのに、解約は電話でしかできない。よくある形ですが、いま起きているのは次のことです。
その体験は、そのまま共有されます。数字は一時的に守れても、獲得のコストが上がっていきます。
逆に、やめやすいサービスは、始めるときの心理的な障壁が低い。解約のしやすさを訴求に使っている事業者もあります。加えて、契約形態によっては法令上の要件に関わる可能性があるため、法務との確認が要ります。
改善は測定から。初見の人に解約操作をやってもらい、時間を計る。数字にすると、議論が進みます。
初期設定は、いちばん強い誘導
オプションが最初から入っている。メール配信が既定でオン。カートに自動で追加される。
多くの人は初期値を変更しません。だから、数字は確実に伸びます。ただし、後から気づかれたときの反応がいちばん大きい領域でもあります。「勝手に付けられた」という体験は、解約と悪評に直結します。
点検は簡単です。初期状態でオンになっている項目を、すべて書き出す。そして、なぜオンなのかを説明できるか確認する。説明できないものは、オフにしてください。
同意は、対称かどうかで見る
基準は1つだけです。「同意する」と「同意しない」が、同じ大きさ・同じ手数か。
拒否のボタンだけ小さい、色が薄い、階層が深い。ここが崩れていると、同意の有効性そのものが問われる可能性があります。
確認方法もあります。同意画面を白黒で印刷してみる。色の差がなくなった状態で、それでも対等に見えるかどうか。
煽りは、実データかどうかで分かれる
カウントダウン、残数表示、閲覧人数。演出そのものが問題なのではありません。実データに基づいているかどうかです。
更新すると元に戻るカウントダウン、常に「残り1点」、根拠のない閲覧人数。事実でない表示は、法令上の問題になり得ます。事実であっても、繰り返すと効かなくなり、信用だけが減ります。
点検は、表示している数字の出どころを1つずつ確認するだけです。
7つの型と、最初の一歩
| 型 | 問題のある箇所 | 最初の一歩 |
|---|---|---|
| クリーンな設計 | なし | 基準を文書にして残す |
| 解約が難しい | 出口 | 解約までの時間を計る |
| 価格が後から出る | 総額表示 | 各画面の表示金額を並べる |
| 同意で稼いでいる | 同意画面 | 白黒で印刷して対称性を見る |
| 煽りで売っている | 緊急性の演出 | 数字の出どころを確認する |
| 初期設定で取っている | 既定値 | オンの項目を全部書き出す |
| 言葉で誘導している | 文言 | 断るボタンを声に出して読む |
直すのは、指摘される前のほうが安い
最後に、実務的な話を。
これらは、外から指摘されてから直すと高くつきます。改修だけでなく、説明、報道対応、失った信用の回復まで含まれるからです。
施策レビューに、この6項目のチェックを入れておく。人が入れ替わっても残る形にしておくと、じわじわ足されるのを防げます。設計の基準を文書にしておくことが、いちばん確実な予防です。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。法的な助言ではありません。適法性の判断は、法務や専門家にご確認ください。