解約しにくい設計が、そのまま獲得コストを上げている
ウェブで申し込めるのに、解約は電話でしか受け付けない。短期の数字は守れますが、その体験は共有されます。測定から始める話です。
- こんな人に
- サービスの解約導線を設計する人
- 結論
- 出口の狭さは、そのまま入口の狭さになる。まず時間を計って測る
- 読む時間
- 約2分
解約率が下がった。導線を1つ深くしたからだ。
この施策は、短期の指標では成功に見えます。ただ、コストは遅れて、別の指標として現れます。
そして、現れる先は別の部署の指標であることが多い。だから、判断に反映されません。
出口の狭さは、入口の狭さになる
やめにくいと分かっているサービスには、人は慎重になります。
解約のしやすさは、始めるときの心理的な障壁を下げます。逆に、解約が難しいという評判が立つと、獲得の単価が上がっていきます。
そして、いまはその体験が共有されます。個人の投稿でも、比較記事でも。1件の悪い体験が、見込み客の判断材料になります。
とくに、検討中の人は「解約 方法」で検索します。そこに出てくる内容が、契約前の判断材料になっています。
コストは、遅れて来る
- 問い合わせ対応。解約したい人からの連絡は、対応コストが高い。
- 悪い評判。検索したときに出てくるものが変わります。
- 再獲得の難しさ。一度嫌な思いをした人は、戻ってきません。
- 法令上のリスク。契約形態によっては、要件に関わる可能性があります。
解約率の改善分が、これらを上回っているか。測っている組織は多くありません。
あわせて、解約した人が戻ってくる率も見る価値があります。気持ちよく辞められた人は、状況が変われば戻ります。
測定から始める
議論を進めるには、数字が要ります。
初見の人に、解約の操作をやってもらい、時間を計る。社内の別部署の人でも構いません。
「申し込みは2分、解約は12分」。この形にすると、感覚の議論が事実の議論になります。
このとき、途中で詰まった箇所も記録する。どこで迷ったかが、そのまま直す場所になります。
対称にする、という基準
設計の基準は、1つで足ります。申し込みと解約が、同じ経路・同じ手数か。
- ウェブで申し込めるなら、ウェブで解約できる。
- 導線の深さを、同じにする。申し込みが2クリックなら、解約も2クリック。
- 解約ページへのリンクを、隠さない。設定画面から、たどり着けるようにする。
この基準なら、判断に迷いません。対称かどうかだけを見ればいい。
引き止めは、1回まで
解約時の引き止めが、すべて悪いわけではありません。
1回だけ、代替案を提示するのは妥当です。プランの変更、一時停止。実際に、それで解決する利用者もいます。
問題になるのは、何度も確認画面が出る、電話でしか手続きできない、理由の入力を必須にするといった形です。ここは、引き止めではなく妨害として受け取られます。
理由を聞くこと自体は有用です。ただし、任意にする。必須にすると、正直な理由が書かれなくなり、データとしても使えません。
解約のしやすさを、訴求に使う
最後に、攻めの使い方を。
「いつでもすぐ解約できます」を、獲得の訴求に使う事業者があります。実際、迷っている人の背中を押します。
出口を広げることは、守りではなく攻めの施策にもなり得ます。自信のあるサービスほど、これができます。
自社の状態は、ダークパターン診断で確認できます。