起業がうまくいかない理由は、能力より順番
独立してうまくいかなかった人の話を聞くと、能力が足りなかったという説明はあまり出てきません。出てくるのは「顧客の当てがないまま始めた」「お金が続かなかった」「家族と揉めた」。どれも、始める前に確認できたことばかりです。
いちばん効くのは「顧客の当て」
成否をもっとも強く分ける条件は、技術でも資金でもなく、お金を払う人が具体的に見えているかどうかです。
判定は簡単で、「誰が」「いくらで」「なぜ他社ではなく自分に」を3行で書けるかどうか。書けないなら、まだ着手は早い。
そして、口約束は数えないほうが安全です。「いいですね、ぜひ」と言われた案件のうち、実際に発注になるのはごく一部です。
売る仕事は、誰かが必ずやらないといけない
技術や品質に自信がある人ほど、営業を後回しにします。良いものを作れば売れる、という前提です。
ところが、作れる人より、売れる人のほうが少ない。そして売る仕事は、誰かが必ずやらないと事業になりません。
自分が苦手なら、克服する必要はありません。組む相手を先に決めるほうが早い。ただし、その前提で収支を組んでおく必要があります。
余力は、安い仕事を断る力になる
生活費の余力が薄い状態で始めると、いちばん条件の悪い仕事を受けざるを得なくなります。
そして、安く受けた実績は、後から値上げしにくいという形で長く残ります。最初の価格が、その後の相場を作るからです。
目安として、生活費の6〜12か月分。この現金は、事業のためというより判断の自由を買うためのものです。
家族との話は、賛否ではなく条件で
身近な人に話していない、という状態はよくあります。反対されるのが怖いからです。
ただ、反対されるのが怖くて話していない場合、それは合意ではなく先送りです。始めてから揉めると、事業と家庭の両方が同時に苦しくなります。
話し方にコツがあります。賛成か反対かを聞くのではなく、条件を提示すること。「いくらまで・いつまで試す」「だめだったらどうする」。決まった話には、人は反対しにくくなります。
7つの型と、次にやること
| 型 | いま足りていないもの | 次にやること |
|---|---|---|
| 事業条件はそろっている | 周囲の合意 | 金額と期間を決めて家族と話す |
| 気持ちが先行している | 顧客と余力 | 「誰が・いくらで・なぜ自分に」を書く |
| 作れるが売り先がない | 売る力 | 作る前に1件だけ先に売る |
| 余力が足りていない | 現金 | 半年分を貯める期限を決める |
| 副業から始める形が噛み合う | 変動への耐性 | 副業規程を確認して小さく始める |
| 会社の中のほうが力が出る | 売る力と変動耐性 | 社内で領域を広げる道を検討する |
| いまは動かないほうがよい | ほぼすべて | 現金→顧客→合意の順で埋める |
辞めてから始める必要は、たぶんない
起業というと、退職して専念する形が思い浮かびます。ただ、多くの場合それが最善とは限りません。
基盤を残したまま小さく始めれば、実際の需要を確かめてから判断できます。立ち上がりは遅く見えますが、撤退の判断も冷静にできる。
確認しておくのは勤め先の副業規程と、始める前の基準です。「月◯円を◯か月続いたら本格化する」と決めておけば、勢いではなく事実で判断できます。
制度の確認は、必ず一次情報で
開業の届出、青色申告、消費税やインボイスの扱い、業種ごとの許認可。どれも期限や条件が細かく決まっていて、しかも年によって変わります。
解説記事は書かれた時点の制度に基づいているため、読んだ時点では古くなっていることがあります。
金額や期限が関わる判断をするときは、国税庁・所管の官公庁の案内で最新の内容を確認し、個別の事情が絡む判断は税理士など有資格の専門家にご相談ください。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。起業を勧めるものでも止めるものでもなく、事業計画の評価でもありません。開業・税務・許認可の判断は、所管の官公庁の案内と有資格の専門家にご確認ください。