ショートスリーパーになる方法は、たぶんありません
4時間で足りる人になりたい、という願いはよく分かります。使える時間が毎日4時間増えるなら、人生の総量が変わるからです。ただ、短く眠って足りる体質は、訓練で手に入るものではないと考えられています。
本当に短くて足りる人は、ごく少数
短時間の睡眠で日中の機能が落ちない人は実在します。ただし、その割合はかなり小さいと考えられており、体質として決まっている部分が大きいとされています。努力や慣れで到達できる状態ではない、というのが厄介なところです。
一方で、「自分はショートスリーパーだ」と言う人はもっと多い。この差が、そのまま問題の本体です。多くの場合、起きているのは別のことです。足りていない状態に、慣れただけ。
慣れると、眠気の自覚だけが先に消える
短時間睡眠を続けると、体は不足に適応します。ただし、適応するのは眠気の感じ方であって、パフォーマンスのほうではありません。
つまり、こうなります。判断力や注意力は落ちているのに、本人の自覚だけが戻ってしまう。落ちていることに、落ちているせいで気づけない。これが、短時間睡眠のいちばん危ないところです。
だから、自覚は当てになりません。かわりに、外から見える場所で確かめます。
足りているかどうかは、この3つで分かる
- 休日に、何時間眠るか。いちばん嘘をつきません。平日より2時間以上長く眠るなら、体が取り戻しに来ています。意志では止められない反応です。
- 静かな場所で、すぐ眠ってしまうか。会議、移動中、映画館。足りている人は、静かにしていても簡単には眠りません。
- カフェインなしで、午後が持つか。持たないなら、それは足りていない状態を隠しているだけです。
3つのうち2つが当てはまるなら、短時間で足りているのではなく、足りていない状態が続いています。
気分は、集中力より先に壊れる
もうひとつ、見落とされやすい指標があります。気分と、人への当たり方です。
睡眠が足りないとき、最初に落ちるのは集中力だと思われがちですが、実際には感情の制御のほうが先に効きます。ささいなことでいらだつ、言い方がきつくなる、決めるのが面倒になる。
そして、これも自分では見えません。身近な人に聞くのが、いちばん正確です。「最近きつい言い方をしていないか」と。
7つの型と、次にやること
| 型 | いま起きていること | 次にやること |
|---|---|---|
| 短い睡眠で足りている | まれな体質の可能性 | 半年に一度、必要量を測り直す |
| 短くはないが足りている | 睡眠としては最も良い状態 | いまの時間を削らない |
| 睡眠負債をためている | 休日に体が取り戻している | 平日の就寝を30分早める |
| 気づいていない | 眠気の自覚だけが鈍っている | 自覚ではなく記録で確かめる |
| カフェインで持たせている | 眠気を隠しているだけ | 午後2時以降のカフェインをやめる |
| 体がサインを出している | 長さではなく質の問題の可能性 | 医療機関に相談する |
| 長く寝ないと持たない | 必要量が多い体質 | 睡眠を前提に生活を組み直す |
時間を増やしたいなら、削る場所は睡眠ではない
短時間睡眠に憧れる理由は、たいてい「時間が足りない」ことです。それなら、順番を変えたほうが早く着きます。
足りていない状態では、同じ作業に余計に時間がかかります。判断が遅くなり、やり直しが増え、決められずに先送りする。削った1時間より、失った効率のほうが大きいということが普通に起こります。
削る場所は、ほかにいくらでもあります。会議、通勤、なんとなく見ている時間、引き受けなくていい仕事。睡眠は、いちばん最後に手をつける場所です。
それでも短くしなければならない時期には
受験、繁忙期、子どもが小さい時期。どうしても削らざるを得ない時期はあります。そのときは、被害を小さくする方向で考えます。
- 起床時刻だけは固定する。就寝が遅れても、起きる時刻を動かさないほうが体内時計は保てます。
- 休日の寝だめは2時間以内。大幅にずらすと、月曜がさらにつらくなります。
- 午後の短い仮眠を使う。15分程度にとどめると、夜の睡眠に響きにくくなります。
- 期限を決める。「この時期が終わるまで」と区切る。終わりのない短時間睡眠は、どこかで必ず破綻します。
受診したほうが早い場合
最後に、これだけは書いておきます。次のような場合は、生活習慣の工夫では届きません。
- いびきを指摘される。眠っているあいだに呼吸が止まっていると言われた。
- 十分な時間眠っているのに、日中の眠気が強い。
- 起床時に頭痛や口の渇きがある。夜中に何度も目が覚める。
- 寝つけない、または早朝に目が覚める状態が数週間続いている。
睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、精神科などが窓口になります。長く眠っても回復しないタイプの不調は、自力の工夫では改善しません。受診したほうが、結果的にずっと早く済みます。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。また、医学的な助言ではありません。睡眠に関する不調が続く場合は、医療機関にご相談ください。