好きな音楽は「ジャンル」ではなく、時代と国から探すほうが早い
新しい音楽を探そうとして、ジャンル名で検索して、よく分からないまま戻ってくる。よくあることです。原因ははっきりしていて、ジャンル名が、音の手触りをほとんど説明していないからです。
ジャンル名は、当てにならない
同じ「ロック」という名前の中に、静かなものと爆音のもの、1965年のものと2025年のものが同居しています。「ジャズ」も「ポップス」も同じです。名前は残りますが、中身は10年ごとに入れ替わります。
だから、ジャンル名だけで探すと外れます。もっと当たる座標が2つあります。時代と国です。
時代は、録音の手触りを決める
音楽の聞こえ方は、そのとき使えた機材でほとんど決まります。1960年代の録音は、少ないマイクで一斉に演奏したものが多く、音がひとかたまりで前に出てきます。1980年代以降は、パートごとに録って重ねられるようになり、輪郭がはっきりしました。2010年代以降は、家で作られた音楽が一気に増えました。
つまり、時代を選ぶことは、音の質感を選ぶことです。「生の手触りが好き」なら、探すべきは特定のジャンルではなく、年代のほうです。
- 1950〜60年代。一発録りの生々しさ。演奏の一体感が出ます。
- 1970年代。録音技術が広がり、長い曲や凝った構成が増えます。
- 1980〜90年代。電子楽器が主役に。輪郭のはっきりした音になります。
- 2000年代以降。誰でも作れる時代。国も地域も混ざっていきます。
国は、リズムを決める
もうひとつの座標が国です。こちらは、リズムの取り方に直接効きます。
手拍子を打つ場所が違う、と言うと分かりやすいかもしれません。西アフリカ、ブラジル、キューバ、ジャマイカ、そして日本。それぞれ、体が乗る場所が違います。ジャンルを変えても飽きるのに、国を変えると新鮮に聞こえるのは、これが理由です。
探し方も簡単です。「国名 + 年代」で検索する。それだけで、地図と年表の交点に立てます。
歌詞を聴くかどうかで、世界の広さが変わる
この診断でいちばん結果を左右するのが、歌詞への比重です。
言葉を強く聴く人は、母語の音楽が圧倒的に有利になります。訳では届かないものがあるからで、これは弱点ではありません。日本語のうたを深く掘るほうが、満足度が高くなります。
言葉をあまり聴かない人は、世界中が候補になります。意味が分からないことが、まったく損になりません。むしろ、言葉が意味として入ってこないぶん、音として聴けます。ここが低い人は、聴ける範囲がいちばん広いと考えてください。
8つの型と、探しに行く座標
| 型 | 時代 | 国 | ジャンル |
|---|---|---|---|
| 1960年代・英米ロック | 1960年代後半〜70年代前半 | イギリス・アメリカ | ロック/ブルースロック/ソウル |
| アメリカのジャズ | 1950〜60年代 | アメリカ | ジャズ(小編成) |
| ヨーロッパのクラシック | 17〜19世紀 | ドイツ・オーストリア・イタリア・フランス | バロック/室内楽/独奏 |
| 南米・アフリカのリズム | 1960〜80年代と現在 | ブラジル・キューバ・ナイジェリア・マリ | サンバ/ボサノヴァ/サルサ/アフロビート |
| ヨーロッパのエレクトロニック | 1990年代〜現在 | ドイツ・イギリス・フランス | テクノ/ハウス/エレクトロニカ |
| 静けさの音楽 | 1980年代と現在 | 日本・北欧 | アンビエント/環境音楽/モダンクラシカル |
| 歌詞で聴く | 1970年代〜現在 | 日本 | フォーク/シンガーソングライター/シティポップ |
| 世界の新譜を掘る | 現在進行形 | 世界中 | 分類前の越境的な音楽 |
「同じ曲ばかり聴いてしまう」への答え
新しさへの好奇心が低く出た人へ。これは悪いことではありません。ただし、掘る方向を間違えると行き詰まります。
おすすめは、横ではなく深く掘ることです。好きな1曲の発売年と国を調べて、その交点にあるものだけを探す。関係のない新譜を100曲流すより、当たる確率がずっと高くなります。
逆に、好奇心が高く出た人は、時間を決めたほうがいい。月に1日だけ新譜の日を作る。決めないと、掘る型の人ほど、忙しくなった途端に定番へ戻ります。
聴く時間を、少しだけ作る
最後にひとつだけ。ながら聴きは便利ですが、それだけだと好みは更新されません。新しい音楽が入ってくるのは、たいていちゃんと聴いた10分のほうです。
週に一度、10分でかまいません。何もしないで、1曲だけ聴いてみてください。それだけで、次に何を探せばいいかが分かるようになります。
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