足りないものが分かると、次にやることが決まる
やる気が出ない、意味が感じられない。こういうとき、原因を心の側に探しがちです。ただ、眠れていない人に意味の話をしても届きません。順番を分けて見ると、次にやることがはっきりします。
まず、この枠組みの限界から
マズローの欲求階層は、心理学の教科書に出てくるほど有名ですが、厳密に検証された法則ではありません。
実際には、生活が苦しいなかで創作を続ける人もいますし、承認を求めずに自己実現に向かう人もいます。順番は、思ったより自由です。
それでも枠組みとして役に立つのは、足りていないものを分けて見られるから。全部をひとまとめに「調子が悪い」と扱うより、どこが薄いかを特定できるほうが、次の一手が決まります。
6つの段を、実務的に言い換える
- 生理的欲求。睡眠、食事、休息。これが崩れると、上のすべてが実行できません。
- 安全欲求。お金、健康、住まいの見通し。ここが薄いと、目の前のことしか考えられなくなります。
- 所属と愛。受け入れられている場所。あると、多少の失敗では折れません。
- 承認。認められている、役に立っている実感。
- 自己実現。自分らしさを発揮している感覚。
- 自己超越。自分の外にある目的とのつながり。
いちばん多いのは、逆転している状態
実際に多いのが、下が薄いのに上を求めている状態です。
睡眠が足りず、お金の見通しもなく、人にも会っていない。そこで「自分は何をやりたいのか」「意味がない」と考え始める。この順番だと、答えは出ません。判断力が落ちている状態で、いちばん難しい問いに取り組んでいることになるからです。
そして、この形は苦しいときほど起きます。土台が揺れているときほど、人は意味を求めるからです。
やることは、目標を捨てることではありません。順番を変えるだけです。今週は寝る。意味は来週でいい。
大人になると、所属は自動では手に入らない
もうひとつ多いのが、生活は回っているのに、つながりだけが薄い状態です。
学生時代は、教室や部活が場所を用意してくれていました。仕事が始まると、その仕組みが消えます。職場の関係は、部署が変われば終わります。
ひとりで回せているぶん、必要に迫られないので、この段階は長く続きがちです。ただ、居場所がないまま上を目指すと、途中で折れます。作り方は面倒ですが、週1回、同じ人に会う予定を1つ。それだけで変わります。
7つの段階と、次にやること
| 段階 | いまの状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| 体を守る | 安全から上が薄い | お金と健康の見通しを数字にする |
| 土台を固める | つながりが薄い | 週1回、同じ人に会う予定を作る |
| つながりが育つ | 手応えが薄い | できたことを1日1つ書き留める |
| 手応えを求める | 自分らしさが薄い | 時間を忘れたことを3つ思い出す |
| 自己実現 | 力が出ている | 崩れたら土台に戻ると決めておく |
| 自己超越 | 外に目的がある | 自分の土台を犠牲にしない |
| 土台が薄いまま上を求める | 順番が逆 | 今週は寝ることだけを目標に |
上にいることが、偉いわけではない
最後に、誤解されやすい点を。
この階層は、人の価値の順位ではありません。段は状態であって、その人の格ではない。そして、上の段に着いた人も、環境が変われば下から崩れます。それは後退ではなく、ふつうに起こることです。
崩れたときにやることは、ひとつだけ決まっています。自己実現を維持しようとせず、土台に戻る。それができる人は、何度でも戻ってこられます。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。マズローの欲求階層は広く知られた枠組みですが、厳密に検証された法則ではありません。生活に困窮している場合は、自治体の相談窓口や公的な支援制度をご確認ください。