道具を入れても、業務が変わらない理由
DXがうまくいかない理由を並べると、技術の話はあまり出てきません。止まるのは、導入の手前と、導入したあとです。この2つは、どちらも人の側の問題です。
手前で止まる:現状が数字になっていない
何を変えるかを決めるには、いまがどうなっているかが要ります。
ところが、多くの現場で語られるのは「なんとなく大変」です。これでは、優先順位が決まりません。そして、良くなったかどうかも分かりません。
始め方は簡単です。いちばん時間を使っている作業を1つ選んで、1週間だけ時間を計る。それだけで、話が具体的になります。
手前で止まる:業務が分解されていない
もう1つ、導入の手前でつまずく点があります。
「この仕事は人にしかできない」と言われる業務の中には、たいてい機械にできる工程が混ざっています。判断が要る部分と、作業の部分が分かれていないだけです。
1つの業務を10の手順に書き出してみると、これが見えます。全部を自動化する必要はありません。3つでも減れば、効果は出ます。
あとで止まる:現場が使わない
失敗の理由でいちばん多いのが、ここです。
良い道具でも、現場が使わなければ何も変わりません。そして、使われない理由は、たいてい説明不足ではありません。
- 手間が増える。入力が増えた、二重管理になった。
- 評価が下がる。作業が見える化されて、監視のように感じる。
- 覚え直しが必要。いまのやり方で回っているのに、負担だけが増える。
抵抗には理由があります。いちばん反対している人に、何が困るのかを聞く。ここから始めると、設計が変わります。
あとで止まる:定着しない
導入は始まりです。半年後に見にいくと、元のやり方に戻っていることがよくあります。
理由は、運用のルールが決まっていないこと。誰が入力するか、誰が見るか、うまくいかないときは誰に聞くか。ここが決まっていないと、忙しくなった時点で元に戻ります。
そして、担当者が変わったときにも戻ります。属人化していないかを、確認しておいてください。
7つの型と、次の一手
| 型 | 強み | 次の一手 |
|---|---|---|
| 道具好き | 入れられる | 反対している人に理由を聞く |
| 可視化 | 現状が見える | 1つの現場で小さく試す |
| つなぐ | 現場と道具の橋渡し | 技術に詳しい人と組む |
| 小さく試す | 失敗が小さい | 運用ルールを決めて渡す |
| 定着させる | 元に戻らない | 粗い状態で1つの現場に出す |
| 道具に抵抗 | 現場の気持ちが分かる | 道具は詳しい人に任せる |
| 現状が見えていない | これから | 1つの作業を1週間計る |
小さく始めると、実例が説得材料になる
最後に、進め方の話を。
全社で一斉に始めると、失敗したときに全部が止まります。そして、次の提案が通らなくなる。
1つの部署、1つの業務、1か月。この範囲で試すと、失敗しても被害が小さい。そして、うまくいけば実例が、いちばん強い説得材料になります。
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