経営者に向いている人は、どんな人か
経営者になれるかどうかを決めるのは、性格の強さでもカリスマ性でもありません。 続いている会社とそうでない会社を分けているのは、もっと地味な要素—— 売る力があるか、現金を握れているか、間違いを捨てられるかの3つです。
「経営者タイプ」は一種類ではない
成功した経営者を並べてみると、共通点よりも違いのほうが目立ちます。 構想を語って人を巻き込む人、自分で客を連れてくる人、数字を握って一円単位で守る人、 人を集めて任せることで大きくする人。どれも成立していて、どれか一つが正解ということはありません。
だから「自分は経営者に向いていない」と感じている人の多くは、特定の型のイメージと自分を比べています。 口下手でも、慎重でも、人前が苦手でも、成立している型は存在します。重要なのは、自分の型に足りない部分を誰が埋めるかです。
創業期に効くのは、売る力
立ち上げの時期にもっとも生存率を上げるのは、技術でも構想でもなく、自分で客を連れてこられるかどうかです。 どんなに良いものを作っても、売れる経路がなければ現金が尽きます。
売るのが苦手なら、それ自体は問題ではありません。問題は、売れる仕組みを用意せずに始めてしまうことです。 共同創業者、既存の取引先、紹介の経路、代理店。何かしらの入り口を用意してから始めた人と、 作ってから考えた人とでは、最初の1年の景色がまるで違います。
会社は利益ではなく、現金で倒れる
黒字なのに倒産する、という話を聞いたことがあると思います。帳簿の上で利益が出ていても、 支払いの日に手元の現金が足りなければ止まります。逆に、赤字でも現金があるうちは続きます。
だから経営者が絶対に手放してはいけないのが、資金繰りの把握です。 経理を人に任せるのは構いませんが、「来月と再来月、いくら残るか」だけは自分で言えるようにしてください。 ここを人任せにした状態で、事業の判断は下せません。
いちばん大事なのは、自分の読みを捨てられること
事業計画は、ほとんどの場合そのとおりにはなりません。前提が外れるのが普通です。 そこで問われるのが、自分が正しいと思っていた読みを、事実が出たときに素早く捨てられるかどうかです。
一貫性は信頼を生みますが、市場が変わったのに方針を変えられない一貫性は、単なる遅れです。 逆に、変えすぎると社内が方針を信じなくなります。だから変える理由と、変えない部分を同時に言葉にすることが要ります。
始める前に決めておく、たった一つのこと
多くの人が始めるときの計画は立てますが、やめるときの条件を決めていません。 そして事業がうまくいかないとき、判断がもっとも鈍っているのは本人です。 「あと少しで好転するかもしれない」という感覚は、資金が尽きるまで続きます。
だから、始める前にどうなったらやめるかを数字で決めて、信頼できる人に伝えておいてください。 「手元資金が◯か月分を切ったら」「◯か月連続で受注がゼロなら」。 これがあるかどうかで、再挑戦できるかどうかが決まります。
6つの力と、埋め方
| 力 | 不足すると起きること | 埋め方 |
|---|---|---|
| 構想力 | 目先の受注で手一杯になる | 四半期ごとの到達点を1行で書く |
| リスクの取り方 | 機会を逃し続ける | 失っても続く金額の範囲で試す |
| 人材と組織 | 人数が増えた瞬間に詰まる | 採用と権限の基準を文章にする |
| 数字の管理 | 現金が尽きるまで気づけない | 資金繰り表だけは自分で更新する |
| 売る力 | 良いものが売れないまま終わる | 売れる経路を用意してから始める |
| 学習と修正 | 外れた読みを抱えたまま進む | 撤退の条件を先に数字で決める |
組む相手は、能力より「言い合えるか」で選ぶ
共同創業者や役員を選ぶとき、多くの人は能力や経験で判断します。しかし実際に事業が壊れるとき、 原因のほとんどは能力不足ではなく、悪い知らせを言い合えなくなったことです。
数字が悪い、想定が外れた、自分が間違っていた。これを早い段階で口に出せる関係があるかどうかが、 修正できるかどうかを決めます。相手を選ぶときは、うまくいっているときの相性ではなく、 うまくいっていないときに何が起きるかを想像してください。
この記事は本アプリのために書き下ろした一般的な考え方の整理であり、特定の事業や投資を勧めるものではありません。 資金調達・税務・法務に関わる判断は、必ず有資格の専門家にご相談ください。