資格は「取れるか」ではなく「使えるか」で選ぶ
資格の失敗には、二つの形があります。受からずに終わる形と、 受かったのに使い道がなかった形。件数として多いのは、実は後者のほうです。 だから選ぶときの問いは、難易度ではなく用途から始めるほうがうまくいきます。
取る前に決めておく、3つのこと
勉強を始める前に、次の3つを一行ずつ書いてみてください。書けないなら、まだ選ぶ段階ではありません。
- 誰に見せるのか。採用担当か、社内の上司か、目の前のお客さんか。相手によって効く資格は変わります。
- 何ができるようになるのか。「詳しくなる」ではなく、具体的にどんな作業を任されるようになるかを書く。
- いつまでに取るのか。期限のない勉強は、たいてい半年後に止まっています。試験日から逆算する。
この3つが埋まると、選択肢は自然に絞られます。逆にここが空欄のまま難易度だけで選ぶと、 合格したあとに何も変わらないという、いちばん残念な結果になりがちです。
「資格は意味がない」と言われる理由
よく聞く言葉ですが、正確には「資格だけでは意味がない」です。 資格が示すのは、その分野の言葉を知っているという事実で、仕事ができるという証明ではありません。 採用の場面で見られているのは、資格の有無ではなく、資格と経験の組み合わせのほうです。
だから効き方は、大きく3つに分かれます。①持っていないと働けないもの(就業要件になる資格)、 ②持っていると仕事が来やすいもの(信用の裏づけになる資格)、 ③知識の抜けを埋めるためのもの(学習の目標として使う資格)。 ①を狙っているつもりで③を取ってしまうと、期待した変化は起きません。
難易度より、作業への耐性で選ぶ
資格の勉強は、短くても数か月続きます。この期間を決めるのは頭の良さではなく、 その分野の作業を毎日やっても苦にならないかです。
数字の照合が苦にならない人にとって、簿記は淡々と進みます。 条文を読むのが苦にならない人にとって、法律系は苦行になりません。 逆に、合わない分野を根性で押し切ろうとすると、多くの場合3か月目で止まります。 合う・合わないは、30分だけ触ってみれば分かります。買う前に、試してください。
働きながら取る人の、時間の作り方
社会人の合格を決めているのは、勉強量そのものより、時間の確保の仕方です。 共通しているのは、次のような形でした。
- 先に受験料を払う。期限が動かせなくなると、逆算が始まります。もっとも安上がりな装置です。
- 同じ時間帯に固定する。「空いたらやる」は、まず実現しません。朝でも通勤中でもよいので、場所と時刻を決める。
- 教材を1つに絞る。複数買うと、比較に時間が溶けます。まず1冊を3周するほうが速い。
- 過去問から始める。テキストを読み切ってから解くと、範囲の広い試験では間に合いません。
- やめる日を決めない。体調や繁忙期で飛ぶ日は必ずあります。飛んだ日を失敗と数えないほうが続きます。
未経験からの転職に、効く資格と効かない資格
未経験の分野へ移るとき、資格が効くのは就業要件になっている職種です。 介護、電気工事、宅建の設置義務など、持っていること自体が条件になる場合は、年齢や経歴より優先されます。
一方、実績で評価される分野では、資格単体の効きは弱くなります。 IT・デザイン・企画などがこれにあたり、ここでは作ったものを1つ見せるほうが速い。 資格は「独学でも続けられる人だ」という証明として補助的に働きます。 どちらの分野に向かっているのかを見誤らないことが、時間の使い方を大きく変えます。
8つの分野と、入口になる資格
| 分野 | 入口になりやすい資格 | 効き方 |
|---|---|---|
| 会計・税務 | 日商簿記3級・2級 | 業種を選ばず通用する |
| 法律・許認可 | 宅建士・行政書士 | 独占業務があるが営業が要る |
| 人と組織 | 衛生管理者・キャリアコンサルタント | 転職せず社内で使える |
| IT・データ | 基本情報技術者・クラウド認定 | 作ったものと組んで効く |
| 現場・技能 | 第二種電気工事士・危険物乙4 | 就業条件そのものになる |
| 語学・対外 | TOEIC・貿易実務検定 | 入口になり、実績が仕事を運ぶ |
| 金融・相談 | FP技能士3級・2級 | 自分の家計にもそのまま使える |
| 医療・福祉・教育 | 介護職員初任者研修・登録販売者 | 短期で取れて求人に直結する |
掲載している資格名は分野の目安です。試験制度・受験資格・免除条件は年によって変わるため、 出願の前に必ず各実施団体の公式案内で最新の内容をご確認ください。
2位の分野と、掛け合わせる
同じ資格を持つ人は、たいていたくさんいます。だから位置を取るのは、資格そのものではなく組み合わせのほうです。 簿記と英語。宅建と建築の現場経験。FPと人事の実務。 一つひとつは平凡でも、掛け合わせると急に希少になります。
診断結果の「近い分野」に出た2位は、その掛け合わせの候補です。 1位の分野で土台を作り、2位の分野から1つだけ足す。 これが、限られた時間でいちばん効率のよい積み方になります。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。 掲載している資格名は分野の目安であり、合否や就職を保証するものではありません。 試験制度・受験資格・実施時期は年によって変わるため、出願前に各実施団体の公式案内をご確認ください。