ワークライフバランスは、時間を半分に割ることではない
バランスという言葉から、仕事と生活を五分五分にする姿を思い浮かべる人は多いのですが、 実際にうまくいっている人の配分を見ると、半々であることはほとんどありません。 効いているのは割合ではなく、切り替えられることと自分で決められることの二つです。
同じ労働時間でも、消耗の度合いはまるで違う
週に50時間働いていて元気な人と、40時間で消耗している人がいます。この差を作っているのは時間の長さではありません。 進め方や順番を自分で決められるか(裁量)、困ったときに頼れる相手がいるか(支援)、そして終業後に頭を離せるか(切り替え)。 この三つが揃っていると、人はかなりの負荷を吸収できます。
逆に、量は多くなくても、自分では動かせない事情に時間を支配され、相談相手もいない状態は驚くほど消耗します。 「もっと効率よく働けば解決する」と考えて自分を追い込む前に、消耗の原因が量なのか、裁量なのかを見分けてください。 原因が違えば、打ち手も変わります。
回復を決めるのは、休んだ時間の長さではない
同じ2日の休みでも、回復する人としない人がいます。差を生むのは、仕事から心理的に離れられた度合いです。 チャットを開き、頭の中で来週の段取りを回し続けているなら、身体は休んでいても心は稼働したままになります。
- 切断する時間帯を決める。「20時以降は見ない」など、都度の判断を挟まない形にします。疲れているときほど、その場の判断は負けます。
- 未完了を書き出してから終業する。気がかりは、忘れないよう頭が保持し続けます。紙に出すと手放せます。
- 能動的な休息を混ぜる。散歩や運動など、注意の向き先が変わる活動は、横になっているより回復に効くことがあります。
- 細切れではなく、まとまりで休む。1日おきの半休より、連続した数日のほうが深い回復につながりやすい。
余白は、余らせても生まれない
仕事以外の時間は、忙しさが落ち着いたら取ろう、と考えているうちは永遠に生まれません。 仕事は空いた場所に流れ込む性質があるからです。余白を持ちたければ、先に予定として押さえるしかありません。
おすすめは、週に1回、90分だけ何も入れない枠を作ることです。長時間である必要はありません。 重要なのは、それが動かせない予定として扱われることです。「空いていたら休む」ではなく「休む時間に仕事を入れない」。 この順番の違いが、1年経つと大きな差になります。
最初に削られるのは、つながり
忙しくなったとき、人がまず削るのは仕事以外の人間関係です。会うのをやめても誰にも怒られませんし、 短期的には何の支障もありません。だからこそ、減っていることに気づけません。
しかし、仕事の外の関係は、調子を崩したときの受け皿になります。 仕事だけが自分を支えている状態は、その仕事がうまくいかなくなった瞬間に、逃げ場のない状態に変わります。 月に1回、仕事と関係のない人と会う予定を先に入れておく。これだけで、いざというときの選択肢が残ります。
「忙しいのに手応えがない」がいちばん消耗する
忙しさと充実は別のものです。忙しくて充実している時期は、たいてい持ちこたえられます。 いちばん消耗するのは、忙しいのに前に進んでいる感じがしない状態です。
この状態から抜けるとき、休養はあまり効きません。効くのは刺激のほうです。 負荷を増やすという意味ではなく、関わる相手や役割、場所を少し変えるということ。 同時に、進んだことを記録に残す習慣も助けになります。停滞感は、記録がないと実際より強く見えるからです。
6つの状態と、次にやること
| 状態 | 起きやすいこと | まずやること |
|---|---|---|
| 均衡がとれている | いまの組み立てが機能している | 負荷が増えたとき何を手放すか決めておく |
| 仕事に寄っている | 余白とつながりが細っていく | 動かせない予定として空白を先に置く |
| 全部やって消耗 | やりがいが疲れの信号を隠す | 並行しているものを1つ一時停止する |
| 手綱が自分にない | 量ではなく裁量のなさで消耗する | 順番を自分で決められるか相談する |
| 暮らしを優先 | 生活は守れるが手応えが薄い | 自分で選んだ距離かどうか確認する |
| 静かに停滞 | 危機ではないので放置される | 負荷ではなく新しさを足す |
バランスは、時期によって偏っていい
仕事に振り切る時期があってもいいし、家庭や健康のために距離を取る時期があってもいい。 毎週きれいに配分することを目指すと、かえって窮屈になります。 見るべきは1週間ではなく、数か月から1年の単位での揺り戻しがあるかどうかです。
危ないのは、偏っていることではなく、偏りが固定して戻らなくなることです。 だからこの診断は、一度きりではなく、時期を変えて何度か測ることをおすすめします。 1回の点数より、前回からどちらに動いたかのほうが、はるかに多くを教えてくれます。
この記事は本アプリのために書き下ろしたものです。特定の書籍・論文からの引用は含みません。 裁量・支援・要求という見方は、産業保健の分野で広く共有されている一般的な概念として用いています。 心身の不調が続く場合は、産業医・かかりつけ医などの専門家にご相談ください。