「見て覚えろ」はもう続かない。最初の3か月ぶんだけ書き出す
言葉にできない技術は、失われます。全部を言語化する必要はありません。最初の3か月ぶんだけ書き出す話です。
- こんな人に
- 自分の技術を人に渡したい職人肌の人
- 結論
- 全部を言葉にしなくていい。最初の3か月ぶんと、失敗の避け方だけ書く
- 読む時間
- 約3分
教えるのは難しい。感覚でやっている部分が、言葉にならない。
これは、事実です。ただ、言葉にできない部分は、自分と一緒に消えます。
そして、消えるときは静かです。誰も困っていないように見えたまま、いつのまにか同じ品質が出せなくなります。
なぜ、言葉にならないのか
熟練するほど、判断が自動化されます。
考えずにできるようになったことは、説明できません。だから、教えようとすると「感覚」としか言えなくなる。
これは、能力が高い証拠でもあります。ただ、渡すときには障害になります。
つまり、教えるのが下手なのではなく、上手くなった副作用です。ここを分かっていると、責める必要がなくなります。
全部を言語化しなくていい
ここで、目標を下げます。
最初の3か月ぶんだけ書き出す。全部ではありません。入口の部分だけ。
これがあると、教える側の負担がはっきり減ります。毎回同じことを口で説明しなくてよくなる。
書く順番は、この形が楽です。
- やる順番だけ、先に並べる。理由はあとで足す。
- 使う道具と、置き場所。意外とここでつまずきます。
- できあがりの判断基準。「どうなったら完了か」。
- やり直しの判断。どこまでなら直せて、どこからは作り直しか。
書きやすいのは、失敗のほう
実用的なコツを1つ。
うまくやる方法は、言葉にしにくい。ただ、失敗の避け方は書けます。
「ここでよく失敗する」「こうなったら、やり直したほうが早い」。この形なら、感覚に頼らず書けます。そして、いちばん役に立つ。
失敗の記録には、もう1つ利点があります。自分の失敗も減ります。書いた時点で、意識に上がるからです。
見せながら、理由を言う
もう1つの方法です。
作業を見せるとき、手を動かしながら、なぜそうしているかを口に出す。
これは、教わる側にとって情報量が全然違います。そして、自分の判断も整理されます。言語化の練習になる。
このとき、「なんとなく」で止めない。「音が違うから」「手応えが軽いから」。感覚の根拠を1つ言葉にすると、そこから渡せる形になります。
技術を渡しても、減らない
不安の話も1つ。
教えると、自分の価値が下がるのではないか。この不安は、自然なものです。
ただ、実際には教えられる人は、それ自体が希少です。そして、渡せる人には、より大きい仕事が来ます。1人で抱えている限り、扱える量は変わりません。
記録は、自分のためでもある
最後に。
書いたものは、自分が忘れたときにも使えます。数年ぶりの作業で、自分の記録に助けられることがある。
まとめ
- 言葉にできない部分は、自分と一緒に静かに消える
- 説明できないのは下手だからではなく、身についた副作用
- 全部でなくていい。最初の3か月ぶんだけ書き出す
- 順番・道具と置き場所・完了の判断・やり直しの線、の4つから書く
- うまくやる方法より、失敗の避け方のほうが書ける
- 見せるときは、手を動かしながら理由を口に出す
誰かに渡すためだけではありません。自分の型は、職人肌診断で確認できます。
そして、書いたものは自分の仕事の証明にもなります。何ができるかを説明する場面で、これ以上の材料はありません。